法然院

2014年10月22日 09:38

法然院の梶田(かじた)(しん)(しょう)貫主(58)を9月5日午前11時に訪ねました。この日は秋風を感じるすがすがしい日和で、平日のこの時間には観光客の姿も見ませんでした。

法然院は宗派の組織に属さない単立の宗教法人で、檀信徒によって維持されている仏教寺院です。このあたりは鹿ケ谷(ししがたに)という地名ですが、鎌倉時代のはじめ法然が念仏読経を唱えた旧跡で、今も専修念仏の修行道場としてその精神は325年余りにわたり受け継がれています。

境内の墓所には学者や文人墨客のお墓が多いのです。マルクス経済学者の河上肇、哲学者の九鬼周造、東洋史学者の内藤湖南、作家の谷崎潤一郎、歌人の川田順、画家の福田平八郎らが眠っています。

日常は檀信徒のために法事を執り行っているため、本堂・伽藍内は非公開ですが、年2回(4月1日~7日、11月1日~7日)特別公開が行われます。墓地や本堂前の庭園は自由に参詣できるよう開放されています。また演奏会、寄席、音楽劇、文化塾など様々な活動に格安の料金で会場を提供しています。

「ここで2、3時間過ごされることで、お寺に親しみを覚えてもらえます」と、梶田貫主は話されています。週末に参詣される人々は貫主が法話されることを掲示(インターネットでも)で知ることができます。

境内は閑寂な環境を保持し、多くの野鳥のほか、ホタル、ムササビ、イノシシ、キツネ、タヌキ、リス、テンなども生息して豊かないのちの営みを続けています。坂を下った正面の「(とも)()き堂 法然院森センター」には周辺の環境を紹介するギャラリーがあり、ここを拠点に環境学習活動も行われています。

高度経済成長の時代、核家族化が進み「そこに居れば自分の祖先とつながる“私のふるさと”というり所をなくしました。現代人はお寺に癒しを求めてやってきますので、お寺が新たな拠り所を提示できるか問われる時代です」と語っておられます。

そのためにいつ来ても“ただいま”といえるように寺院を守っていきたいと話され、その延長線上に位置する「哲学の道 いま」もそうした空間であってほしいと願っておられます。

「大晦日の夜、薄明かりの哲学の道を歩けば方々からお寺の鐘音が聞こえてきます」と、そこにはかつての哲学の道が蘇ると。

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