トークイベント「カタツムリがこんなに面白い」

2014年11月15日 17:56
11月15日(土)13:00~14:30 会場: 法然院
 
第1部 陸産貝類のおもしろ基礎知識

     高田良二氏 (西宮市貝類館学芸員日本貝類学会会員。阪神貝類談話会副会長。兵庫生物学会会員。他)    

カタツムリは

革造形作家の河野甲氏の展示会「獣貝草虫の博物誌~河野甲の革造形の世界~」が若王子倶楽部左右および法然院で開催されたのを機に、西宮市貝類館学芸員の高田良二氏とのトークイベントを実施した。
「カタツムリ」は日常語として日本人にはなじみ深い。同じ仲間のナメクジは気色悪いが、貝をつけているカタツムリはかわいというのが一般の人の印象だろう。
でんでん虫々 かたつむり、
お前の頭は どこにある。
角だせ槍だせ 頭だせ
明治のころから小学校唱歌で歌われている。それほど身近な生きものだけどお二人の話を聞いて知らないことだらけであった。
学芸員の高田良二氏はさすがに専門家であるだけに「陸産貝類のおもしろ基礎知識」と題してパワーポイントで世界のカタツムリを系統的に話された。
カタツムリの祖先は、およそ5億5千万年前に誕生した軟体動物の中の腹足類が起源で、その仲間が進化し鰓呼吸が肺呼吸となり陸上に進出した。貝の種類は世界に約11万種で昆虫は約100万種いるという。カタツムリの仲間は約3万5千種類で、地底湖や洞窟、標高4,000mの高山帯にも棲息している。
カタツムリは休眠や冬眠、土の中に潜るものもいる。タンパク質の豊富な身を餌とする天敵も多い。酸性雨、森林の伐採などの影響でその数を減らしているそうだ。多くの種類が雄・雌の区別のない雌雄同体で植物やキノコを餌としているが、中にはミミズや同類のカタツムリなどを襲って食べる肉食系もいる。
 
奇人変人か
こんなカタツムリにのめり込んでいる河野氏と高田氏は多忙な世界で過ごしている人たちには奇人変人に映るかもしれない。ところが昔からカタツムリの虜になった人は少なくない。民俗学者の柳田国男氏は著書『蝸牛考』の中で、日本国中でカタツムリの呼称が異なることに関心を寄せ、200種類以上の呼び方を収集している。河野氏は宇和島の出身で、柳田国男氏はそこでの呼称はカタトと書いているが、河野氏は「自分のいたころは、そういう呼称はなかった」というように時代とともに変化しているようだ。
京都とカタツムリの縁も深いと河野氏は指摘する。ひとりは平瀬與一郎氏で日本の貝類学に手をつけた最初の日本人である。明治期に私財を投じて念願の平瀬貝類博物館を京都市左京区岡崎に開館した(4年間で閉館になったが)。もうひとりは平瀬氏と同じく淡路出身の貝類学者の黒田徳米氏で尋常小学校出であったが、京大で教鞭をとった人物だという。
革造形作家の河野氏は作品とは別に足でカタツムリを採取、殻を利用して胴体部はシリコンを使って約300弱の標本もつくっている。「この標本づくりで日本列島を味わえるのが無性に楽しい」と、スズメバチに襲われたことも、ものともせずに革造形と標本づくりに没頭している。
西宮市に貝類館があることを知った人も少なくないと思われる。そこの学芸員の高田氏は「北海道で熊が襲ってくるかもしれないと心配しながらカタツムリの生態を研究したことがあります」と、思い入れを語った。
法然院から哲学の道あたりにもクチベニマイマイなど、カタツムリを見ることができるそうだから、散策する時に観察するのも楽しいだろう。
 
(文責:「哲学の道 いま」編集担当・岡田清治)
 
 
第2部 高田良二氏×河野甲氏のカタツムリ四方山話
    ~河野甲氏の秘蔵標本をみながら~
 
《河野甲氏》
革造形作家 京都在住
東京、大阪、仙台、奈良、京都、ニューヨークでの定期開催をはじめ、
全国各地で個展を行う。
作品集「静かな八月」

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