2014年10月16日 いきものオーケストラ ~“いのち”“生きる”を考える~

2014年10月16日 13:05
地球上に生命が誕生して38億年、私たち人間もそのいきもののひとつです。多くのいきものが神秘的に暮らしている法然院で「いのち」や「生きる」を10月16日夜、三人のゲストによる鼎談に耳を傾けながら約80名の参加者と一緒に考えました。
 
長谷川和子(若王子倶楽部代表)挨拶 
ここ哲学の道は周辺の住民にとっては暮らしの場ですが、多くの先人たちが哲学を、人生を考えた道です。21世紀の新しい価値観を考える道になればとっても素敵だと思っています。人間はいきものの中では最上だというキリスト教の教えに対して、日本人はいきものと同じだとする日本人特有の価値観を求めてきました。哲学の道の若王子神社近くにある若王子倶楽部左右と法然院をつなぐことでもっと広がることができると思っています。
本日はいきものと向き合いながら現代文明を考え、「どう生きるか」を探す旅を続け、矛盾を抱える現代社会で生きることについて科学者、宗教者、蒔絵師と生きる立場が異なる三人が存分に話し合いをしていただけると思います。
 
 
◆第1部「生命誌版 セロ弾きのゴーシュ」
 宮沢賢治原作の「セロ弾きのゴーシュ」がJT生命誌研究館の中村桂子館長プロデュース、プラハで活躍している人形劇師の沢則行氏の演出で人形劇になりました。人形劇を映像化した作品で京都では初めての上映です。
 
プロデュースした中村桂子氏(JT生命誌研究館館長) 
3・11の原発事故は本当にショックでした。科学者である自分は何ができるのかと、悶々とする日が続きました。歌手なら歌うことで、サッカー選手なら一緒にサッカーをすることで、被災地である東北の人たちに役立てるのです。しかし、私は何もできないではないかと自問し悩みました。
現地に行っても“邪魔になるだけ”という思いで落ち込みながら、やはり生きているということは、どういうことかと考え尽くすしかないとの結論に至りました。
震災のあと、宮沢賢治がとても読みたくなるなど、今、東北に学ぶものが多いという気持ちが強くなりました。もともとはとても好きということではありませんでしたが、その時は問いかけたくなったのです。
 数ある作品の中から「セロ弾きのゴーシュ」を取り上げました。子どもの頃に読んだ時は、「ネコ、カッコウ、タヌキ、ネズミのおかげでゴーシュが上手になった」程度しか考えていませんでしたが、今回、気づいたことがあるのです。町での「第六交響曲」の練習でのチェロはうまく弾けません。乾いた世界ですが水車小屋に帰ってくると、必ず水を飲む。湿った世界に入る儀式です。そこで動物たちからいのちの音をもらいます。音楽会本番には聴衆がアンコールを求める。いのちの音が乾いた世界の人を動かしたのです。
原発事故の後の世界もそうなってほしいと願いました。乾いた社会がいのちの音で動かされることを。直後、そうなるかなと思いましたが、東京は東北がひどい事態になったこともすっかり忘れ、次々と高層ビルを建て元に戻っています。辛い状態です。それでも、私はいのちを考えていくしかないと思っています。

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